日帰りで富士登山 御殿場口初挑戦!

2021年2月28日

富士山御殿場口
富士山御殿場口

はじめに

当サイトは、日帰り富士登山やいわゆる弾丸登山を推奨していません。余裕を持ったスケジュールと体調管理に努め、無理をせず安全な富士登山を目指しましょう。高山病は、時として重篤な結果を招く恐れがあります。頭痛や吐き気の症状が現れたときは、決して無理をせず、高度を下げる・下山する勇気を持ちましょう。

6年振りの富士登山

2013年6月に富士山がユネスコの世界文化遺産に登録されてから5年が経過しました。前回の富士登山が2012年8月末に富士宮口からの登頂なので、こちらからは6年が経とうとしていました。元々、登山客が非常に多いことで知られていた富士山ですが、世界遺産に登録されたことをきっかけに、更に登山客が激増していることは、各方面で報道されているとおりです。登山客の多さと、開山期間中の終日マイカー規制もあり、ここしばらくは富士登山とは距離を置いていました。これまでに登ったことのある登山道は、富士宮口と吉田口の二つです。残りの須走口と御殿場口は未経験で、いつかは全ての登山口を制覇したいという思いは持っていました。そして、2018年の夏、御殿場口からの富士登山を決めました。前年の2017年にも御殿場口単独富士登山を計画をしたものの、実現に至らず一年が経過してしまいました。勤務先の富士登山経験者(御殿場口未経験)のTさんにも声を掛け、2人での御殿場口富士登山計画を立て始めました。

御殿場ルートに決めた

御殿場口は、富士登山4ルートの中では一番難易度が高く、初心者向きではないと言われています。その理由は、5合目の標高が1,440mと他の登山口に比べて1,000m程度低い所からのスタートとなり、歩行距離が長いことと山小屋の数が少ないことです。そのため、登山客は4ルートの中で一番少なく、開山期間中であってもマイカー規制が無い唯一の登山口です。ということで、「一番過酷な御殿場口を体験してみる」が今回の富士登山のテーマです。

御来光と夜間登山

もう一つのテーマは「御来光」です。過去の富士登山は、早朝出発の日帰り登山しか経験が無かったため、御来光を見たことはありませんでした。そして、「初めての御殿場口、初めての夜間登山、初めての御来光」という初めて尽くしのプランが固まっていきました。「初めての御殿場口」で用意した物は、登山用のゲイター(スパッツ)です。これは下山時の大砂走り時に、靴の中に砂が入ることを防止するために必要です。その他には、普通のマスクを持って行きました。これも大砂走り時の砂ぼこり対策です。その他に準備したことは、初めての夜間登山・御来光対策として、近所の低山(標高600m程度)で夜間登山と御来光を体験してから、本番に挑みました。

スケジュール

スケジュールは、以下のとおりとしました。

  • 21時:愛知発
  • 24時:御殿場口新5合目駐車場着
  • 0時30分:登山開始
  • 8時:登頂
  • 10時:下山開始
  • 13時:御殿場口新5合目駐車場着
  • 14時:温泉でさっぱりして昼食
  • 16時:温泉発

今考えると、「何て前向きで強気なスケジュール」でしょうか。そして、このスケジュールは早々に破綻し、思いもよらない旅程へと姿を変えていくことになることは、誰も想像していませんでした。

富士登山当日 新月の夜間登山

富士登山当日を迎えました。定時で仕事を終え、急いで帰宅し、入浴と夕食を済ませました。予定どおり愛知を出発し、ほぼ予定どおり御殿場口5合目駐車場に到着です。

駐車場には、登山客の車が数多く停まっていました。天気は晴れで風も有りません。新月のため月明かりは全く無く、代わりに満天の星空でした。夜間登山という点からは、月明かりが有るに越したことはないのですが、今回は残念ながら漆黒の闇の中を、ヘッドライトの明かりだけを頼りに進むことになりました。準備を整え、バックパックを背負います。今回は、いつもの登山用品に加えて、御来光撮影機材(フルサイズの一眼レフカメラ(CANON EOS5D4)、レンズ(CANON EF24-70mm F2.8L II USM)、小型三脚(ベルボン LUXi mini III))とクッカー(JETBOIL フラッシュ)があるため、重さがずっしりとのしかかります。

登山開始 火山砂礫との闘い

いよいよ登山開始です。まずは、6合目まで3時間の道のりです。登山開始早々、御殿場口らしさを感じます。それは、足元が砂地で非常に歩き難いということです。溶岩が細かくなった黒い砂の上(火山砂礫)を、ザックザックと歩いていきます。砂地が深い所もあり、良く言えばフカフカで足腰に優しい反面、思うように歩が進まず、無駄に体力を削られる感覚を覚えます。そして、前述したとおりの暗闇。他の登山客が多ければ、ライトの明るさで登山道も照らされるのでしょうが、そんなことも全く無く、自分のヘッドライトの明かりを頼りに進みます。分かってはいましたが、こんな中をただひたすら進みます。

誤算と自信喪失、削られる体力と脚力

僕の富士登山履歴は、今回が6回目で登頂回数は3回です。酷い高山病には毎回悩まされるのですが、脚力にはそれなりに自信が有るつもりでした。というのも、下山時に膝の痛みや膝がガクガクになることは有っても、上りで足に痛みが出ることはありませんでした。しかし、今回は明らかに違いました。太ももの張りを早い段階から感じ始めていました。とにかく、砂が歩き難いことこの上ない。まるで砂浜を歩いているかのようです。平坦な道なら良いのでしょうが、当たり前ですが登山なので上へ上へと登らなければなりません。こればかりは、経験値が物を言うのでしょう。慣れている方は、器用に無駄なく登って行きます。それに比べて僕たちは、砂の洗礼を嫌と言うほど受け、体力と脚力を削られていきました。背後には、御殿場市街地の美しい夜景が見えるのですが、写真を撮影する気力も沸きません。何度も足を止めて休憩しながらですが歩を進めます。本当に想定外の展開でした。まさか、6合目に着くまでにここまでやられてしまうとは・・・。

登頂断念

とても登頂なんて言っている場合では無いことは明白でした。どこまで、行けるのか。どこまで足が持つのか。とにかく足が攣らないように最新の注意を払いながら考え続けていました。今回の富士登山にどのように決着を着けようかと。そして、決断をしました。「新6合目で御来光を見て、引き返そう。」と。Tさんに苦渋の決断を伝えると、賛成をしてくれました。

新6合目到着と御来光

ゴール地点を新6合目にしたことで、気持ちに余裕は生まれましたが、足の辛さは相変わらずでした。そして、登山を開始してから5時間後、新6合目(標高2,590m)に到着し雲海の中から昇る御来光を見ることができました。御来光の美しさに心を奪われながら、目的の一つである写真撮影をしました。

富士山御殿場口御来光
富士山御殿場口御来光
富士山御殿場口御来光
富士山御殿場口御来光
富士山御殿場口御来光
富士山御殿場口御来光

そして、クッカーでお湯を沸かしてカップラーメンを食べました。しばらく休憩をしていると、すっかり体力は回復し、足の違和感も無くなっていました。しかし、今回はこれより上は目指さず引き返します。すでに頭の中は、下山後の温泉の事で一杯でした。

下山

後は、帰るだけです。今から引き返すと、温泉の開店時間には早過ぎるため、時間調整をどうしようかと考えていました。下山を始めると、まだ時間が早いということもあり、多くの登山者とすれ違いました。あれほど苦労した砂地も、下りの時には全く苦になりません。下山を開始して、2時間程度で駐車場に戻ってくることができました。

富士山御殿場口
富士山御殿場口

富士山本宮浅間大社

駐車場に戻ってきました。まだ7時前です。温泉の営業時間は10時からなので時間はたっぷりと有りました。この空いた時間を活用するために、当初の予定には無かったのですが、富士宮市の富士山本宮浅間大社に参拝することにしました。

参拝を済ませ、御朱印を頂いても、まだ時間があります。

富士山本宮浅間大社
富士山本宮浅間大社
富士山本宮浅間大社御朱印

富嶽温泉花の湯

すっかり時間に余裕の有るスケジュールになってしまいました。温泉近くのマクドナルドで朝食を食べながら、開店時刻を待ちます。そして開店時刻となり、お待ちかねの入浴です。夜間登山からの早朝下山ということで、それほど汗もかいていませんが、汗を流して疲れを癒しました。あまりにも時間が有るので、リフレクソロジーで頑張ってくれた足を癒します。ゆとりある癒しの時間を過ごした後、帰路につきました。

まとめ

御殿場ルートは砂との戦いでした。下山時の大砂走りでは登山者にとって強い味方となる火山砂利ですが、上りの時には、登山者に立ちはだかる壁となります。砂に足を取られ、思うように歩が進まないストレスは、なかなかの物がありました。この砂がほかの登山ルートには無い、御殿場ルートの大きな特徴です。そして、登山口近くの山小屋の後、7合目まで山小屋が無いことも特徴です。僕は、新6合目で下山したため、この山小屋にさえ辿り着くことができませんでした。これは、およそ5時間の間、トイレに行くことも水分等を補給をすることもできないことを意味します。そして、悪天候時や体調不良時に避難することもできません。もちろん歩行ペースにもよりますが、6時間程度で7合目に着くとして、その間を無補給で乗り切れるだけの準備をする必要があります。
良かった点としては、登山客が少ないため、静寂の中を自分のペースで登ることができます。また、視界を遮るものが無いので、御来光はどこでも見ることができ、美しい夜景を望むことができます。

ルートマップ

富士山御殿場口 ルート

そして、これから1年後、富士登山御殿場口リベンジのお話はこちら。