ウルトラウォーキングに初挑戦!「中山道・木曽路ウルトラウォーキング103km」不眠不休の25時間!!【100kmウォーク】

2023年1月14日

ウルトラウォーキングとは

世の中にはウルトラウォーキングや100kmウォークと呼ばれるジャンルのイベント、レースがあることをご存じでしょうか?ウルトラウォーキングとは40km〜100km以上を歩くレースを指し、100kmウォークは文字通りの意味です。東海地方在住の方であれば、ウォーキングイベントというとJR東海のさわやかウォーキングや名鉄のハイキングが頭に思い浮かぶのではないでしょうか?しかし、これらとウルトラウォーキングや100kmウォークは全く別のジャンルです。

ウルトラウォーキングに初挑戦

僕自身のこれまでの長距離歩行・ランニングの経験はフルマラソンが最も長い距離となります。フルマラソンにはこれまで4回挑戦し、3回完走しています。フルマラソンを余裕を持って完走出来る様になった暁にはウルトラマラソンにも挑戦したいという思いはありますが、今の所は未挑戦です。フルマラソンでは練習不足もあるのでしょうが、毎回足の痛み(膝とふくらはぎ)に泣かされて、本当の意味での完走(立ち止まらない・歩かない)が出来ていません。そんな中、ウルトラウォーキング・100kmウォークに初挑戦してみることにしました。初めてのウルトラウォーキングなので、自分の体が果たしてどの様な状態になるのか全く想像がつきません。12時間以上動き続けた経験というと、ロードバイクでの日帰りフルビワイチや日帰り富士登山位しか経験が有りません。それが今回は少なくとも20時間以上は不眠不休で歩き続ける訳なので、心配な反面、そこにどんな世界が見えるのか期待に胸を膨らませることになりました。ウルトラウォーキングに挑戦することに決まれば、あとはどの大会にエントリーするかです。初挑戦なので出来る限り平坦で歩き易いコースにしたいという気持ちとは裏腹に、初挑戦は今回限りなので、どうせなら思い切って難関コースにチャレンジしようという思いにも駆られていました。そして、日程の都合の合った「第5回中山道・木曽路ウルトラウォーキング103km」にエントリーしました。このコースはかなり過酷の様です。制限時間が30時間と余裕が有る割には完歩率は69%と決して高くありません。獲得標高は2,000mを超え、コース状況はロード・トレイル・石畳とウォーキングとは名ばかりのトレッキング・登山の様相を呈す様で、全国的にも有名なハードコースとのこと。これは期待に胸が高まります。

準備

さて、話しを少し過去に戻しましょう。ウルトラウォーキングに向けての装備品の準備の話です。僕の場合はウルトラウォーキングとトレイルランニング双方を視野に入れて道具を揃えていきました。先ずはトレイルランニングシューズ、その後はランニングベストを買い揃え、実際に日帰り登山で使用して使用感を確かめつつトレーニングを重ねて行きました。レインウェアも今回新たに買い足しました。ランニングベストを背負った状態で着ることが出来るタイプのレインウェアです。その他にはモバイルバッテリーを複数準備して当日に備えました。100km歩くためのトレーニングは特別なことをすることはありませんでした。近所の里山に度々登る他には富士登山をした位です。後は日常的に行なっている数キロのジョグを継続している程度です。可能であれば30km〜40km程度を事前に歩こうと考えてていましたが、結局叶わずに当日を迎えました。

迎えたウォーキング当日

当日は7時台の電車に乗り、受付開始時間の20分程度前には岐阜駅に到着していました。天気は快晴で絶好のウォーキング日和です。天気予報は明日も含めて雨の心配は全く無さそう。せっかく新調したレインウェアを着る必要は無さそうです。ただ一つ心配なのは日中の気温の上昇です。今日の最高気温は28〜29℃で、かなりの暑さが予想されます。岐阜駅の南口に向かうと既に受付が始まっており、周囲にはウォーカーの姿が数多く熱気に溢れていました。受付では参加賞やゼッケン、地図などを受け取りました。この後は開会式なのですが、まだしばらく時間が有ります。自宅を出る時に軽く朝食は食べてきたのですが、もう少しエネルギー補給をしようと吉野家アスティ岐阜駅店に向かいました。牛丼でお腹を満たしエネルギー充填完了です。これからしばらくはまともな食事を取れないはずなので味わって食べました。その後はトイレを済ませて、いよいよ開会式が始まるので再び会場へと向かいました。会場は先ほどよりも更に参加者でごった返しておりイベントの盛り上がりを感じます。太陽の日差しも幾分か強くなっているようにも感じました。ゴール地点で受け取ることが出来る荷物を一つ預けていると、程なくして開会式が始まりました。開会式ではルールや制限時間の説明やコース上での注意点についての説明が有りました。そしていよいよ10時のスタート時刻を迎えました。

緊張のスタート

複数の組に分かれてのウェーブスタートです。僕は2組目でした。記念撮影の後、集団で歩き始めます。雰囲気的にはマラソン大会の様なのですが、スタートの合図の後に歩き始めるのが何とも不思議な感覚でした。周囲の参加者はどの方も百戦錬磨の様に見えます。中には競歩の様に早いペースの参加者も居れば、近所を散歩するかの様な軽装の参加者も居ます。僕は10分/km程度のペースを意識して歩き始めました。中山道・木曽路ウォークということで宿場町を巡ります。まずは給水ポイントの各務原市民公園を目指します。街中を集団で歩きます。信号が多く自然とのんびりしたペースになってしまいます。コース上にはルートを示す貼り紙が掲示されており道迷いの心配はありません。

11時50分に各務原市民公園を通過した後は第1エイドのうぬまの森を目指します。13時55分 日本ラインうぬまの森に到着です。ここで初めて腰を下ろして昼食のサンドイッチと補給食のお菓子を食べました。次の目的地は第2エイドのファミリーマート可児今渡店です。

美しき日本ライン

トレイルを抜けると木曽川沿いの美しい景色を見ながら歩きます。日本ラインは美しい景色の連続で、自然と足を止めて写真を撮る回数も増えてしまいます。雲ひとつない青空と木曽川の峡谷の美しさは、ずっと足を止めて眺めていたくなるほどでした。

第2エイドで少しだけ腰を下ろしてバウムクーヘンと補給食を手早く食べ、次の指定コンビニであるファミリーマート可児御嵩町店を目指して歩き始めました。太陽は傾き始めており、ここで夜間歩行に備えて受け取った反射タスキと持参したバックライト装着します。日中の暑さは落ち着き、涼しさを感じ始めるくらいになってきました。辺りが暗くなってくると、これから始まる夜間歩行に対する不安が頭をよぎります。

日没と人生最高のカップヌードル

18時15分 すっかり日が暮れた中、指定コンビニのファミリーマート可児御嵩町店に到着しました。

ここから先は、いよいよ本格的なトレイルが始まります。明かりのない真っ暗な山道ではヘッドライトの明かりだけが頼りです。東海自然歩道を歩き始めて程なく、これまでの歩行距離が50kmになりました。

時刻は20時ちょうど、歩き始めてから10時間が経過したところです。体の疲れはそれほどなく、足の痛みも有りません。至って快調なまま第3エイドの細久手公民館に到着しました。ここでは公民館の中で休憩することが出来ます。ここでは夕食のカップヌードルを食べました。ラーメンの塩気が疲れた体に染み渡るのを感じました。カップラーメンがこれほど美味しく感じたのは初めてかも知れません。初めての富士登山で山頂で食べたカップラーメンと同じかそれ以上の美味しさに感動しました。そして、ここで初めてシューズを脱いで足を解放しました。靴下の蒸れもなく足の痛みも今のところはありません。心配していた足のマメも大丈夫そうです。あまり長く休憩すると体が固まってしまいそうなので、カップヌードルを食べると早々に歩き始めました。ここから先は深い夜の闇の中でのトレイルが続きます。

満天の星空の下

明かりのない真っ暗な山中では手を伸ばせば届きそうな一面の星空がすぐそこにありました。そんな美しい星空に感動しながらも、終わりの見えない夜間トレイルにうんざりし始めている自分が居ました。辛い急坂を登っては下るの繰り返し。未舗装は気を抜くと躓いたり転倒したりするリスクがあり気を遣います。平坦な道は少なく、常に登っているか下っているかの状況が続きます。強い眠気には幸い襲われなかったので、歩みを止めることなくひたすら歩き続けました。早く夜が明けることを願いながら、夜明けにはゴールしているイメージを持ちながら、無心で歩き続けることしか出来ませんでした。

第4エイド ファミリーマート恵那高校前店を通過しその後のコンビニエイド ファミリーマート新中津川落合店に辿り着く頃には夜も明けていました。時刻は6時30分です。肌寒さを少し感じながら、目前に迫った馬籠宿へと力強く歩みを進めました。

ここからの登り坂はさらに厳しさを増します。落合の石畳の趣ある情景も、今このタイミングではただ歩き難いばかりです。夜露・朝露で湿った石畳は滑りそうで慎重に歩を進めることになりました。

落合の石畳
是より北 木曽路の石碑

10時過ぎに馬籠宿に入ると景観に目を奪われました。

馬籠宿

そして最後の第5エイド 馬籠宿じんばバス停横に到着です。ここではカップ春雨を食べて補給をしました。

余裕のゴールの筈が一転

いよいよゴールの南木曽駅に向けて歩き始めたのですが、最後の最後で今大会1番の試練が待ち受けていました。それは両足の爪先付近の強烈な痛みです。膝などの関節の痛みや、太もも・ふくらはぎなどの筋肉痛は無い中で、予想をしていない箇所に痛みが出始めました。特に下り坂では激痛で、急激にペースダウンし始めました。ここまではエイド以外では立ち止まること無く歩き続けてこれましたが、ここに来て1番の困難にぶつかりました。せめて片足だったら庇いながら歩くこともできたかもしれませんが、残念ながら両足です。痛みに耐えながらも前に進むしかありません。馬籠から妻籠まで、また最後の南木曽駅までがこんなにも遠いのかと途方に暮れそうになりながら、歩き続けました。

痛みに耐え続けて、11時過ぎにようやくゴールの南木曽駅に到着しました。

この時の安堵感と達成感はひとしおでした。「この痛みの中、もう歩かなくていい」それだけを考えていました。記念撮影を終えて荷物を受け取り、南木曽駅で帰りの電車を待つ為に駅構内の椅子に座ると猛烈な眠気に襲われました。気がつくとウトウトとして、寝ては起きての繰り返しです。帰りの電車の中でも同様に、何度も意識が飛んでいました。20時間以上不眠で歩き続けると、これほどまでに体は睡眠・休息を欲するのだと身を持って体験できたのは貴重な経験でした。

帰宅

自宅に戻り、靴と靴下を脱ぐ時は緊張感が高まりました。「あれほどの激痛をもたらした僕の足は一体どうなっているのか?」の答えは一目瞭然。右足の中指と小指の爪が剥がれかけて黒爪になっており、左足の親指の爪は白くなり爪の付近にはこれまで見た事がない位の大きな水脹れが出来ていて、それはそれは痛々しい事になっていました。結果としてこの様な軽い怪我をしてしまいましたが、完歩出来た事は嬉しかったですし、本当に貴重な経験が出来ました。今回の大会をきっかけにウルトラウォーキングや100kmウォーキングの大会には今後も挑戦して行きたいと思っています。